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やがて、その光も見えなくなり、辺りは又、冷たさの青と灰色を取り戻した。 ふと、少年の表情に淋しさがかげり、とぼとぼと歩きだすのである。 ニアもその後をついていく。 マナに並行してニーナがついて行ってしまうからである。 地上の話をしながら歩くと暫くして、少年の家に着いた。 外見はまるで物入れ小屋の様な薄汚れた建物だった。 マナはカチカチと光の弱い黄色の電気をつけて、そのまま奥の部屋の方へ入っていき、「ああ、適当にくつろいでいて。」と言った。 「いや、くつろいで、って言われても…」 ニアは部屋の角に背面が壊れてバネの飛び出ているソファを発見し、おそるおそる腰をかけた。 「痛っ、…刺さるよこれ」 「ああ、気をつけてバネでてるから」 奥の部屋からマナが言った。 みりゃわかるけど、これじゃくつろげねえよ。 ニアは言葉に出すのを堪えながら、端の方に腰掛け、ニーナはニアの膝の上で丸くなった。 ――それにしても… なんて、飾り気の無い部屋なんだろう。テーブルがひとつと、それを挟んだソファがふたつ、それだけだ。 まあ、生活する分には困らないだろうけど、リビングとしては異質な居住空間、灰色の箱… などとニアが思っていると、両手にカップを持って少年は戻ってきた。 「話は変わるけれど」 少年は紅茶をニアの前に置いて、どうぞ、というジェスチャーをして続ける。 「君はどうして、あんな所にいたの。いや僕が言うのもなんだけれど。一般的に暗いし汚いし、おまけに何も無いようなところだろう。」 ニアは何か言いたかったが、何も言わなかった。 正確には言えなかった。 確かに自分の事なんだが、実は綺麗さっぱり忘れてしまっていた。 少年と出会った時に。 (ほんとになにしてたのかな…) 気の効いた事のひとつでも言わなければ、と苦悩していると、それを見た少年は少し慌てながら、いいよ無理しなくって。と言った。 ―――暫く無言が続いた。 アンニュイな時間が流れて、ニアは又、夢の続きを考えていた。
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