壱 ゆりかけ

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永い。責苦のように永い。色々な風景と色々な思考が波のように訪れては引いていったが、そのどれもが繰り返しに過ぎないと気づくのはそれほど遅くなかった。 気づいた途端にばかばかしくなったが、それでも待つのをやめなかったのは意地か惰性か。とにかく引き続き、月が上っては落ち、欠けては膨らむその過程を見続けた。 恋人の約束すら夢だったのかもしれないなと思うようになった頃に、庭の池はいやに痩けた自分の頬を映した。
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