始まり...

2/2
534人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
黒い風が、夜道を駆け抜ける。 月明かりが、コンクリートの道を照らし出した。 「―――おい! そっちに行ったぞ!!」 「―――こっちだ!!」 闇夜の住宅街に、男達の声が響く。 1つの人影が、ヨロヨロと塀に近づいた。 背格好からして、若い男だろう。 「……ハァ……ハァ……。……クソッ……」 塀に腕を押し当て、体を支える。 背中を超えるほどの黒髪が、サラリと肩から垂れた。 ポタリ……。ポタリ……。 ダラリと、力無く下げられた左腕から、赤い赤い、血が流れ落ちる。 ザリッ……。 壁を背にして寄りかかる。 ふと、人影が夜空を仰いだ。 「……ハァ……ハァ……。……早く……会わなければ……―――」 人影は何か小さく呟くと、次の瞬間、その場から、忽然と姿を消した。 .
/155ページ

最初のコメントを投稿しよう!