-出会いは突然に-

10/18
前へ
/267ページ
次へ
「……ありが……」 〝パタンッ〟 半分くらいまで開けた蓋を、再び閉じた。 く、栗毛色の足がない女の子がいたのは多分気のせいだな。 うん、きっとそうだ。最近徹夜でゲームしてたから、目が疲れてるんだ。 「さーて、何にもいなかったことだし、帰って飯食わなきゃな」 鞄を拾い上げ、綺麗な回れ右をする。膝を両方折り曲げ、ロケットスタートの準備は万全だ。 「いちについて─…」 「ちょ……ちょっと……待ってっ!」 生で聞くと数倍可愛い声……いやいや、やっぱ、何にも聞こえない聞こえない。 きっと幻聴だ。今度耳鼻科に行こう。補聴器を付けなきゃもうだめかもしれない。 「……ねぇ……ってば……」 だ、だめだ俺。振り返っちゃいけない。あっちの世界の住人になってしまうぞ。
/267ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3857人が本棚に入れています
本棚に追加