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「……ありが……」
〝パタンッ〟
半分くらいまで開けた蓋を、再び閉じた。
く、栗毛色の足がない女の子がいたのは多分気のせいだな。
うん、きっとそうだ。最近徹夜でゲームしてたから、目が疲れてるんだ。
「さーて、何にもいなかったことだし、帰って飯食わなきゃな」
鞄を拾い上げ、綺麗な回れ右をする。膝を両方折り曲げ、ロケットスタートの準備は万全だ。
「いちについて─…」
「ちょ……ちょっと……待ってっ!」
生で聞くと数倍可愛い声……いやいや、やっぱ、何にも聞こえない聞こえない。
きっと幻聴だ。今度耳鼻科に行こう。補聴器を付けなきゃもうだめかもしれない。
「……ねぇ……ってば……」
だ、だめだ俺。振り返っちゃいけない。あっちの世界の住人になってしまうぞ。
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