-出会いは突然に-

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1人帰路を歩いていると、どこからか桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちてきた。 「もう春か──っ」 桜から春の訪れを感じると共に、自分が進級出来たという安堵感に浸っていた。 だって、完璧に留年だと思ってたからね。そりゃあ心配で心配で……夜はぐっすり寝てたけど。 俺が通う桜華高校は一応進学校。県内でもそこそこレベルは高いらしい。 どうして入れたんだろうな? と、最近よく思う。中学の頃は頭が良かったんだな、俺。 「おっと、トムジェリまで後30分しかないっ」 携帯電話のディスプレイには16時30分と表示されている。 ふと空を見上げると少し青みを増した水色と、夕焼けの橙色の2色で隅々まで塗られていた。 所々に星が散らばり、夜が足音を立てて近づいてきているような気がした。 「ホッカイロ持ってくれば良かった……」 4月と言ってもまだ寒さは残る。制服のポケットに手を突っ込み、急ぎ足で家に向かう。
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