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『取り敢えず、近場に行ってみよう』
一郎は念じた。
(近所の公園へ…)
そっとドアを開け出ていく。
ガチャッ
目の前には、楽しそうに遊んでいる子供達、家族連れ、ゲートボールを楽しむお年寄り。
『す、すごい……本物だ!』
一郎は思わず声をあげた。
突然現れたドアと一郎の声に、皆の視線が集中する。
ハッとした一郎は急いでドアに戻ってしまった。
部屋に戻った一郎は、大声で叫んだ。
『やったー!本物だー!
本物だぞ!本物のどこまでもドアだ!』
その興奮は、暫くおさまらない。
『次は、どこへ行こうか!?
温泉か!?いや外国だ!
外国旅行だ!』
一郎は我を忘れてはしゃいだ。
(アメリカへ…)
そう念じて、再びドアを開ける。
ドアの向こうに見慣れない風景が広がる。
まさにアメリカ。
テレビで見たHOLLYWOODの文字が目に飛び込んできた。
一郎は、目立たない場所へドアを隠すと、アメリカ観光へと出かけた。
お金は無かったが、初めてのアメリカに胸が踊る。
1日中ヘトヘトになるまで楽しんだ。
いつもの平凡な生活とは、比べ物にならない刺激だった。
そして、今更になって、自分の幸運を喜んだ。
『さぁ、そろそろ帰ろう。
また明日もある。』
そうして、部屋に戻った一郎は、幸せを感じたまま、眠りについた。
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