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張り詰めた背中に
どれだけの陽が射せば
肺の内を泳ぐ魚は
藍色を戻すのだろう
あばらから零れる
硫酸の海は
引き摺る砂から
爪先を尖らせていく
堕落を奈落に
突き落とした本能
カルキが少し強い夜の
蛇口を撫でる汗は
行く宛てもない文面に
安物のインクを滲ませ
揺らいだ縁取りに
蝋燭を継いでいった
息苦しい程の愛を知って
息苦しい程、藍を失って
このまま何処へ消えてしまえば
埋まっていく涙に
幸福なつぼみは割れるのだろう
焦げ目すら知らない鱗に
自問を繰り返し
亡骸になった時間は
とうに棄ててしまったというのに
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