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雨
こんな日は、西武線は特に遅れる。
お約束のように俺は
いつもより10分早く家を出た。
練馬で快速へ乗り換えるところ、今日は気分で普通電車に乗った。
桜台、一気に人が増える。
「ん?」
「なんか変だぞ」
「この臭いは」
江古田、東長崎で車内は完全満員状態となり、俺は異変に気がついた。
俺の後方右斜め後ろより、妙に密着したこの感じ
間違いなく俺の右肩には、人の頭くらい重いものが乗っている。
「まさか、あのオヤジ、久々の登場か?」
「いや、あの人は普通電車には乗らないはず」
「しかも、あの人なら、ここまで密着してこないはずだ」
椎名町で、ピークを通り越して、足が浮くほどの強烈な満員状態となった。
ぎゅぅぅぅぅ
ぬぅぅっ
!!!!!!!
俺の視界に右斜め後ろから、毛むくじゃらな手が飛び込んできた!
その手は、
俺の右肩から俺の胸元へ伸びてきた。
そして、
右足にオヤジの右足が絡んできて
俺は完全に認識した。
「俺はオヤジに抱かれている!」
恐る恐る顔を右へ、ゆっくりと向けていく。
だぁぁぁ~~~~
やっぱりぃぃぃ~~~
俺の肩に顎を乗せて寝るなっちゅぅ~の!
息がくせぇ~~~
マトモに吸っちまった~~~
「あの人じゃないけど、
これは…あの人だ!」
「し、新種か?」
俺は動揺した。
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