君の隣

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二人は、入学式を終えると教室へ向かった。 「俺の席はっと…」 教室の黒板に貼ってあるプリントを見て拓人は嫌そうな顔をした。 「また一番前…」 名字のあ行順なのか、拓人の席は窓側の一番前だった。 「窓側だからいっか、創は?」 「ここ」 とんとん…指先でプリントの自分の名前が書いてある所を指した。 「三列目の一番後ろか。まっ、席換えのとき隣になればいっか」 ははっと声を出して笑う拓人に創も笑った。 二人が席につくと、すぐに担任の先生がやってきた。 「白戸 龍だ。君達の担任をすることになった。勉強でも国語を担当する。これからよろしくな」 笑顔で挨拶をすると、黒板に少し大きめに自分の名を書いた白戸は、眼鏡をかけて肩までの長さの黒髪を後ろで結んでいた。 30歳前後だろうか…生徒達には他の先生より若く見えた。 「じゃあ、定番だとは思うが出席番号順に自己紹介してもらおうか」 (げっ…) こうゆう時、拓人は出席番号順と聞くと嫌になる。自己紹介が嫌なのではない、一番最初が嫌なのだ。 それを知っている創は隠れるように少し笑った。 「赤月 拓人、君からだ」 「は、はいっ」 白戸に名を呼ばれ緊張した声で返事をすると立った。 その時、ちらりと後ろの席の創を見ると目があった。 そして拓人は落ち着いたのか、ぱっと皆に向くと笑顔で言った。 「赤月 拓人って言います。スポーツ好きなんで休み時間とか誘ってもらえたら嬉しいです。よろしくお願いしますっ」 周りから拍手され、拓人は顔を少し赤くして笑いつつ席に座った。
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