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拓人はトボトボと力なく帰り道を歩いていた。
(朝は二人で通ったのにな…)
ぽとん…っと一粒水が落ちた。
(…あれ?)
それが自分の涙だと気付いた。
(かっこわり)
力なく笑った。
「拓人!」
背中から創の声がした。
拓人は顔を見せたくなくって気付かないふりをした。
「拓人!!」
追い付かれて手を掴まれた。
走って追ってきたのか、創の息はあがっていた。
拓人は顔を見せたくないからか、下を向いたままだった。
「どうし」
「あの子達と一緒じゃないの?お前、モテるもんなー」
「え…」
「戻ってやれば?待ってる‥かも」
(やばい、声震える)
拓人は唇を噛み締めた。
「ごめ‥ん。じゃあな!」
走り出した拓人を、創は追い掛けられなかった。
あのまま追い掛けたら、今まで大事にしていた拓人の隣という位置が壊れそうな気がして怖かったから――
「拓人」
拓人の小さくなっていく背中を見つめると、呟いた。
「俺は…好きだから、お前の隣にいたいだけなんだ」
その願いは、二人とも同じなことを二人は知らない……あの日まで。
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