君の隣

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拓人は動けなかった。 二人の間に重たい静かな時間が流れた―― その沈黙を破ったのは拓人だった。 「さっきの子、泣いてたけどいいのかよ」 「優しくしても彼女を傷付けるだけだから」 創は、乾いていく涙の跡に胸を締め付けられる。 「なら、俺にも優しくすんなよ…」 創は、困ったような笑みを浮かべた。 「…拓人は大事な友達だ」「いやなんだ!!」 もう限界だった。涙のように一つこぼれたら、あとは溢れていくように想いは止められなかった。 拓人は、拳をぎゅっと握り締めると創と向かいあった。 「もう、俺には無理なんだ!」 涙がボロボロとこぼれていく。 「創の一番の友達っていう隣の居場所で満足してた…でも!」 この言葉を言ったら、その隣の居場所まで消えてしまう… ずっと怯えていた。 でも、あの日から友達という名の隣の居場所に苦痛を感じ始めた。 もう、隠してられない――― 「好きなんだ!」 「え…‥」 創は、間違いだと思った。 「創が、好きなんだよ!!」 だが、二回も言われると否定できなかった。 創は、驚きのあまり何も言えなかった。 そんな創を見て、拓人は無理矢理笑おうとした。 「お前、好きな人いるから無理なのはわかってる。それに、俺…男だしな。」 (これで、もう創の隣には入られないんだ…) そう思うと悲しくて涙が止まらなかった。 「カッコ悪いな俺。…そうゆうことだから、創とはもう友達じゃいられない」 (胸が痛いけど、これでいいんだ。) 「じゃあな」 屋上の出入り口に向かおうとしたが、創が掴んだ手を離そうとしなかった。 「創、離し…っ?!」 拓人は、次の瞬間何がおこったのかすぐに理解できなかった。 拓人は、創にグイッと強く引き寄せられたと思ったら抱き締められていた。
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