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頭上から男性の声が聞こえた。けど私には顔を上げる力すら残っていなかった。
「おーい、生きてるか?」
男性は再び声をかけ、私の肩に手を置いて揺さ振る。彼の手は今の私には十分温かかった。
「って、お前めっちゃ冷たっ!おい!!本当に大丈夫か!?」
彼は私の頬を両手で挟んで無理矢理顔を上げる。
『……だ……れ?』
これがやっと言えた言葉。男性は顔を歪ませていた。
「そんな事は後!!まずはお前の、この冷えきった体をどうにかする方が先!!」
そう言って男性は私の体を軽々と抱き上げ、何処かに向かって走った。
何も言わずに、私はずっと彼の体に身を寄せて、温もりを感じていた。
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