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思い切り後ろへ仰け反った拍子、テーブルの端にしこたま頭をぶつけてしまった。
「う゛ぅ~~~~゛」
「わはははは…! 冗談だ、ばぁ~か!!」
高らかに笑い声を上げる高柳を恨めし気に睨みつつ、要は軽くパニックに陥る。
(遊ばれたっ! も、何なのこの人!?
凄く嫌だ!)
「ほら、早く本持って来いよ。
それと後18分で一教科分暗記しないと虐めるぞ?……ついでに言っとくけど、俺への返事は『はい』だけだから。」
ゾクッ!
「はいっ!」
(こんな人雇っちゃうなんて、お母さんのバカバカバカ!絶対に騙されてるよ。)
それから要は暗記、テスト、暗記、テスト………の繰り返し。
五教科全部やった。
(………疲れた。
あれ?先生、またメガネかけてる。)
時計を見ると部屋に入ってから二時間も経っている。
コンコン ガチャ。
「高柳先生、お茶の時間ですよ~。」
トレイにコーヒーとミルクティーを載せて上機嫌の母が現れた。
コーヒーにはミルクも砂糖も添えられていない。
母親が予め高柳の嗜好をリサーチ済みって事は、よっぽどこの男に入れ込んでいるらしい。
要の母は好き嫌いがハッキリしていて好きな人にはとことん尽くし、そして嫌いな人は視界からも抹消出来てしてしまえる特技を持っている。
…自分勝手な女だ。
「先生、要はどうですか?これからも教えて下さるのかしら?」
(…これから? どう言う事?)
要がキョトンとしていると、高柳がにっこり笑って答えた。
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