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何年か経った。
俺は今、ラスベガスにいる。
人間は一生懸命にやれば出来るものらしい。
英語を勉強し、ようやく日常会話まで出来るようになった。
しかし、あくまで出来るようになったのは英語だけ。
俺の頭の中には、死んでしまった友人との約束しかなかったのだ。
「Hi!」
カジノからの帰りに、俺は知り合いに出会った。
「久しぶりだな!克哉!」
「ジョージ!元気そうだな!」
「その顔、何だか楽しそうだな!」
「今度日本に帰るんだよ。明日は土産を買いに行くつもりなんだ。」
「何を買うんだい?」
「少し高価なものでも買おうかと思ってる。家族と行きつけのカフェのマスターと友人たちに。」
「またカジノを沸かせたらしいな!君の《運》はいつ尽きるんだ?」
「…さぁね。じゃあな!」
きっとこの《運》は尽きない。
そう確証のない確信を持ちながら、俺は家に帰るためバスに乗った。
そして…―
俺がバスジャック事件に巻き込まれたのは数分後のこと。
そのバスジャック事件の唯一の死傷者になってしまったのは、さらに数分後のこと。
俺の《運》が尽きてしまったと悟ったのは、死ぬ間際だった。
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