44759人が本棚に入れています
本棚に追加
僕はこの作業が嫌いだ。
「さて、この世には全て、代償が存在することを知っているわね?」
「はい。承知の上です。」
「《大切なもの》を得るためには《大切なもの》を捨てるしかないことも知っているわね?」
「…はい。主のためなら…。」
「…その考えが、いつか身を滅ぼさなければいいけど…。」
「…はい?」
「何でもないわ。…ニコラウス、こちらに来なさい。逃げないの。」
「…バレた?」
「目の端でも分かるのよ?あなたが少しずつ後退していっているのが。さて、代償をまず頂きましょうか。代償は…《空を飛ぶ能力》を頂きましょう。」
『…?』
僕もクロウも、大体同じような顔をした。
「えーっと…魔女様、それはどういう事ですか?」
「簡単な話よ。要するに、あなたは今後、一切飛べなくなる」
「…!そんなことでいいのですか…?」
「構わないわよ。それがあなたの…カラスとしての《大切》。…それに…。」
ロゼは、付け加えるように「今の決断が、今後の人生を左右するかもね。」と言った。
「…構いません。どうか、私の願いを叶えてください。」
「決心が固いようね。さぁ、ニコラウス、教えた通りに…。」
僕も覚悟を決めよう。
ものすごく…嫌な作業だけど、僕はクロウのために、彼と契約の握手を交わした。
最初のコメントを投稿しよう!