44759人が本棚に入れています
本棚に追加
薬を作る作業における、僕の役割は簡単なこと。
だけど嫌いだ。
何故なら…。
「…ニコラウス。覚悟を決めなさい」
「だ、だって…」
「目をつぶればいいじゃない。すぐに終わるわ」
ロゼの手には、ナイフが一本。
ギラギラ輝いて、それが一層恐怖心を煽り立てる。
「仕方ないでしょ?薬を作るには、《契約者の血液》が必要なのだから」
「じ、自分でやるから!ロゼがやると怖いんだよ!」
血液は少量でいい。
なのに、ロゼは必ずナイフを使う。
指先を少し切るだけでいいのに、何故か手首を狙う。
正直、最近嫌がらせではないかと思っている。
〈…魔女様、お遊びはそこまでにしてくださいよ。〉
声を失ったはずのクロウの声が、直接脳内で響いた。
「遊んでないわ。大真面目よ」
「じゃあ、手首を狙わないでよ!」
「その方が大量に作れるでしょ」
「今回はクロウの分だけでいいじゃん!」
「…それもそうね。」
ナイフを手渡され、やっと僕は安全に指先を切れた。
赤黒い血液を、ロゼ特製の魔法薬に落とす。
すると、今回は薄い黄緑色の薬になった。
「じゃあ、これをあなたの主へ」
「…え?薬は契約者以外が飲むと死ぬんじゃないの?」
「それは人間の場合。使い魔は契約した魔法使いの体の一部となるの。だから、問題はないわ」
〈ありがとうございます〉
出来立ての薬は、瓶の中で怪しく揺らめいた。
最初のコメントを投稿しよう!