プロローグ

2/6
前へ
/216ページ
次へ
飛行機の着陸と同時に目を覚ました夏哉(なつや)は、初めて降り立った地を窓から見下ろした。 何の変哲もない滑走路が、これから始まる生活へと続いているようで心が踊った。 今年の春から大学に通うため、故郷を離れ、やって来た。 三月も終わりに近付いてるとは言え、天気は良く、気温も高かった。 やっぱり南は暖かいんだな。夏が恐ろしい。 そんなことを考えながら、夏哉は到着ロビーへと辿り着いた。 確か、渚(なぎさ)叔母さんが迎えに来てるはずなんだが……。 夏哉はロビーをキョロキョロと見回す。すると、後ろから声が掛かった。 「なっくん!」 聞き覚えのある綺麗な声。 夏哉が振り返ると、長い茶髪の綺麗なお姉さん、いや、叔母さんが立っていた。 「お久し振りです。渚叔母さん」 相変わらず綺麗な人だなぁ。これで母さんの妹って言うんだから驚きだよ。 渚は夏哉に満面の笑顔で近寄ると、そっと頬に触れた。 「なっくん、何回も言ってるでしょ? 私のことは渚って呼んでって。 ほら、言ってみて。な・ぎ・さって!」
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3214人が本棚に入れています
本棚に追加