プロローグ

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明るい声で言ったものの、十分に疑い深い。 条件は全て揃ってるのに、何故困った顔をする必要があるんだ? これは怪しいぞ。嫌な予感がする。 「……もしかして、すでに住人がいるなんてことないですよね?」 渚はビクッと肩を震わせた。 マジで? 「夜な夜な、叫び声とかしませんよね?」 「ど、どんな家でもそれくらいはあるわよ、あはは」 いや、普通ないだろ! 笑い事じゃないって! えっ、マジで言ってるの? いきなりこの世以外の者との共同生活ですか? 「ちょっと、渚叔母さん! 俺、嫌です!」 「大丈夫、みんな良い子だから」 たくさんいらっしゃるのですかー! 終わった、俺の大学生活が……。すぐに引っ越そう。 夏哉はこれから遭遇するであろう恐怖に、声も出ないまま、空ろな瞳で窓の外を眺めていた。 「さっ、着いたわよ!」 渚はそう言いながら、エンジンを切った。 夏哉は力なく車から降りた。 「えっ、ここ……ですか?」 先程までとは違い、目に潤いが戻った気がした。
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