プロローグ

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明らかに口元が歪んでいた。上手く笑顔さえ作れないらしい。 「どういうことですか!? なんで美華学園女子寮に来たんですか!?」 夏哉はさらに渚に詰め寄る。 「取り敢えず、落ち着いて、ね! なっくん!」 渚は夏哉の両肩に手を置いて、なだめるようとした。 「落ち着けるわけないじゃないですか!? なんで男の俺が女子寮なんですか!?」 ――パチーン! 渚の平手打ちが、夏哉の右頬に放たれた。 夏哉は唖然として渚を涙目で見つめる。 「なっくん、良い?」 変わらず笑顔で、ゆっくりと渚は口を開く。 夏哉はコクンと頷くことしか出来なかった。 「なっくんには、ここ美華学園女子寮の管理人をやってもらいまーす!」 渚はこの日一番の笑顔を見せた。 夏哉は現実という夢から逃げるため、己を殴った。 が、夢は覚めなかった。
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