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「えぇーい、出たな怪獣」
空が茜色に染まり、カラスもカァカァと鳴き始める。
俺はハァ~っと盛大な溜め息を吐き出し公園のベンチにペタンと座りこむ。
だいたい仕事でミスをしたときはここに来て心を落ち着かせる。
すると目の前で幼稚園くらいの少年達が正義のヒーローごっこなる物を砂場でやっているのが目に入ってくる。
見ていて昔の自分を思い出し意図せず少し顔がニヤけてしまう。
俺が正義の味方に憧れていたのは何年前の話だろうか?
もはや記憶に無いほど昔か……
昔は常にプラスチックで出来た刀をもち歩いてたもんだった…
時に親父をその刀で力一杯叩いたりもしたな、自分の好きだった戦隊なんたらレッドの名前を言いながら。
いつの間にやら現実を知り、この世に地球の生命を脅かす非科学的モンスターは居ないなんて夢の無いことを思った。
まあ、時代の流れなんてこんなもんだ。
あの時は正義の味方に憧れた少年も今はこき使われる平社員となる。
非情と言えば非情だが、それが普通、それが常識だ。
「あ~、時間だ!!僕帰るね」
「なら僕も~」
そんな考え事をしている間に時間がどんどん先に進んでいったらしい。
右手に付けている時計で時刻を確認するともう五時。
「帰るか…」
誰にでもなく呟いた一言は、誰にも聞こえる事無く虚空に消えていった。
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