エピソード:2

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誰もいなくなった教室。人気のない廊下。響くのは僕の呼吸と数名の嘲笑う声。   時折、逃げる僕に向けて罵声をかけながら、本気を出せば直ぐに僕なんて捕まえることができるのに、そうしないのはこれはそういう鬼ごっこだから。   彼らは僕が必死になってるのが楽しいのだ。   「ほらほら、早く逃げないと捕まえるぞ」   彼らはそう言うとスピードをあげる。 彼らはのろまな僕がこれ以上速く走ることができないのを知っていながら煽るのだ。 だけど、いつかは捕まってしまうのがわかっていながら僕が走っているのは、捕まった後にされることを出来るだけ後に後に…できることならされないでいたいという淡い望みからなのだ。   「ほーら、捕まえた!」   彼らはそう言って、僕を羽交い締めにすると、腹にパンチを入れた。   「…っぐっ」   倒れ込みそうになる僕を彼らは支え、今度は蹴りをいれた。   彼らはいつも、僕をサンドバックがわりにして満足すると帰る。それが日課なのだ。   だが、今日はちょっと違った。
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