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「一馬はズルい」
「あ?何がだよ」
「だって、いつも私が欲しい言葉をくれる。して欲しい事を軽くこなしちゃう」
そう、いつも、いつも
私が望むまま。
「これ以上、一馬に溺れさせないでよ」
怖くて仕方がないから
失いたくなくなりそうで
――…怖イ。
「このままじゃ私、一馬が居なくちゃ生きていけなくなっちゃうじゃん」
「なれよ」
「……は?」
てっきりウザイとでも一掃されるだろうと思っていた美織は一馬の思わぬ言葉に目を数回瞬きしてしまう程に驚きを顕にする。
「本気で言ってるの?」
「……ああ、どうやら俺はお前が思うより独占欲が強いらしい」
「……俺様だから?」
「さぁな、知るかよ」
金持ちだからといって欲しいものが何でも手に入る訳じゃない。
現に美織に出逢う迄の一馬は、とても愛情に飢えていた。
多忙で厳しい両親達からは愛情を受けられず、寄ってくる女はと言えば金やルックス目当ての香水臭い女達。
そんな中で美織に出逢い恋に落ち付き合った一馬は、その時、初めて欲しかったものを手に入れた充実感を感じていた。
惜しみない愛情を与え与え返され一馬は深く満たされ最早、美織なしではいられなくなる程に美織を愛していたのだ。
「ククッ……いいじゃねぇか俺様の全てはお前のものだ。同時に美織の全ても俺様のものだがな」
「うっわ出たよ一馬の、どこぞのアニメのいじめっ子思想が……!!」
「フン……不満か?」
「そんな訳ないじゃない」
異常なまでに執着するほど愛した男が自分を欲してくれるは美織にとって、これ以上ない幸福な事な訳で。
美織は顔を赤くしながらも力を抜き一馬の腕に体を預けた。
「一馬好きよ……大好き」
「ああ、俺も好きだぜ」
もしも危機的状況に陥ってどちらかが死ななければいけないとすれば、二人は互いに自らを消すだろう。
だが、もし互いに望むのが同じ想いだとすれば辿り着く場所は違うものかもしれない。
「ねぇ一馬、もし私が寿命以外で死ぬとしたら……一馬が私を殺してね」
「フン……考えといてやる……だが、その時は逆もまた然り……だがな」
「えー…それは嫌だなー」
「じゃなきゃ却下だ」
「んー……解った」
願わくば、互いを失うような悲しい結末を迎えず二人幸福に天へ旅立てますように。
そう切に神に願うふたりであった。
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