もしもキミが……

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「……そうね、もしも殺しにかかってきたら」 そんな事は既に決まり切っている。 「そんなの決まってるじゃない」 「どうするってんだ?」 「私に襲い掛かってきたら死なない程度に負傷させるわ。こう見えても、そこそこ武術や武装具の心得はあるのよ」 「お前が……?」 「そう、一馬には言った事なかったけどね。それに負傷されるのは一馬との残り少ない時間を邪魔されたくないから。けど……」 「けど、なんだ」 曇る美織の表情を視界に映し不思議そうな顔を浮かべ尋ねる一馬に美織は言う。 「……一馬が襲われたら話は別だわ」 「俺が……?」 「……ん、もし一馬が襲われるような事があれば」 そう、もし。 もしも、そんな事があれば 「私は冷静じゃいられないわね…だから、その時は」 「時は?」 「相手を殺すわ」 ふふっと笑った美織の顔と声は殺意と冷酷さに満ちていて、一馬でさえもゾクリと背筋を凍らす程であった。 「お前言ってる事が無茶苦茶な上、矛盾してるぞ。殺すのは駄目なんじゃなかったか……?」 「私は、いいの!!」 「……お前は何様だ」 「俺様な一馬に言われたくないんだけど」 「…………」 事が事だけに、嘘ではないだけに、なかなか言い返せない一馬は顔を引き吊らせる。 「……とにかく、私は一馬に殺しなんてして欲しくないし死んで欲しくもない」 「じゃあ、どうして欲しい」 「……そう、ね」 考え込むように黙り込み視線を宙にやったあと程なくして美織は口を開いた。 「私より生きて」 一分でも、一秒でも 長く長く生きて 「私より先に死なないで」 先に逝くのは許さない お願いだから死なないで 「……て、感じ…かな」 .
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