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「……は?」
「あれ?聞こえなかった?いや、だからー……」
「いや、聞こえてたけどよ……なんだ、それは」
「なんだと言われても、言葉どおりなんだけど」
「……簡潔に言え」
「だからね?私が望むのは私より永く生きて私の最期を見届けて欲しいのよ」
愛しているから生きて欲しい。
愛しているから見届けて欲しい
「後は、私のエゴ」
「……エゴ?」
「うん」
「私は一馬が死ぬのが嫌、それを見るのは嫌。一人じゃ怖いけど護られるだけのお姫様は、もっと嫌」
そう護られてばかりは
なんだか気に食わないの
「一馬が私を大切に思ってくれているように私だって一馬が大切なの、だから私だって一馬を護りたい」
「美織……」
「一馬……愛してる。私より先に死んだら許さないから」
「……死なねぇよ」
ぎゅっと今まで以上に強くしがみつくように抱きついてくる美織の振るえる腕を見て、ああ俺は思っているよりもコイツに愛されていたのかと自覚した一馬は、優しく美織を抱き締め返すのだった。
「ね、一馬」
「……なんだ」
「……私より先に死んだらブッ殺すからね」
「美織……お前、口にしている言葉がおかしい自覚はあるか」
「ある……けど、いいの」
「…クク、ま、お前なら例え天国だろうが地獄だろうが追ってきそうだからな」
「……何ソレ」
想像したのか可笑しがり笑う一馬の姿に、むうっと頬を膨らます美織。
「んな膨っ面してんじゃねぇよ、ブスになるぜ…?」
「そんなブスが好きなのは誰ですかー」
「俺様だな」
「む、手強い」
「好きな女に負ける訳にはいかねぇからな」
「……そーデスか」
反撃するも軽く妖笑で返された美織は、なんだか悔しくてカタ言で精一杯の抵抗を。
だが実際、そんな抵抗は無駄だと美織は解っているのだ。
「ククッ、拗ねんな……ほら、こっち向いて……目ぇ閉じろ」
「……ん」
素直に目を閉じれば振り落ちてくる甘く優しい口付けと、ほのかに漂ってくる香水の香り。
温かな腕の中は心地よくて、まるで酔い痴れてしまいそうだと美織は思う。
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