はじり

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城島 源真 (きじまげんま) 39才。 性別は男。 容姿は普通だろう、きっと。接待業だから清潔感溢れんばかりにこざっぱりした黒髪短髪、ヒゲも毎回剃ってる。 体格は昔、運動やっていただけあってがっちりしてる、身長は180に少し足りないぐらい。 まぁ、ガタイ良いオヤジだな。 そんな俺はつい2年程前まではここいらで1、2位と言われる大きな会社で働いていた。  バリバリの現役営業マンってやつだったんだが・・ 今はというと。 「奥さん、今日はマグロのいいとこ入ってきてるから、旦那さんの晩酌のつまみどうだい?」  買い物カゴを腕に掛け夕飯のおかずを調達しに来た奥さんに笑み浮かべ声をかける。  なんて具合にスーパーの店員なんてやってたりする。商品勧めたり、お客さんの対応したりする事は今までしてきた営業の仕事と扱う物は違うも同じ事だと、俺は思ってる。  しいて言うなら、主婦の方々の方が手強いかもな。  これはこれで遣り甲斐もあって日々充実している、俺的には。  ちょっと困る事は、会社を辞めて2年が経つも、未だに元後輩にあたる奴らが店に来ては・・・。 「城島さん、会社に戻って来てくださいお願いします。」  そりゃもう真剣って言葉が当て嵌まる表情で俺を見詰め頭を下げてくる。  初めてこそ焦った、周りに居たお客さんも何事?なんて好奇な視線を向けてきたが2年に渡り幾度となく繰り返されれは慣れるってもので、またやってるわよ、的な眼差しを向けられる。そのつど俺一人だけ焦って、 「俺はもう会社の人間じゃない、退職金も貰ってるから」 と傍から見れば随分情けなく、しどろもどろになってるそうだ。 なるだろ!普通!  それに、そう簡単に会社には戻れないだろう、上司に紹介された相手、会社の得意先のお嬢さん、結婚半年で別れたら、上司の立場だってあるしな、独りモンの俺が会社を去れば相手のご両親も気を静めてくれるだろ。 人生、山アリ谷アリ。 身に染みる言葉だな。 「お~い、城島くん事務所の方へ来ておくれん、店長が呼んどるよ」 突然掛けられた声に少し慌て振り返り判りましたと軽く手で合図を。 「俺・・・なんかヘマやったかな?」 思い当たる事も無く、何だろう?と首を傾がせ事務所へと向かい歩き始める、人生二度目の波乱を迎えるべく。
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