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円満と言えるのかな、店長になろうと頑張っていた日比野さんも、新店舗へ移れば店長補佐に昇格だし、苦労が報われたんだろうきっと。
俺は別に今のままで十分だったんだが、社長のお孫さんでこの店舗の新店長の補佐になんかに抜擢されてしまい、それが嫌かと言われればそうでもないが、あの向けられた笑みが何故だか物凄く引っ掛かる。
俺の考え過ぎなのかもしれないが。
新店長との顔合わせを済ませ、職場へと戻るべく事務所を後にしようと社長と来月からこの店舗の新店長へと軽く会釈してから事務所を出ようと歩き出す。
ドアを開け、出ようとしたその時。
「城島さん、来月からよろしくお願いします……」
突然、言葉を掛けられ思わず動きを止め見詰めては、口は動いているが声を聞き取る事が出来ず、なんだ?っと首を傾がせ何て言ったのか聞き返そうとしたけれど、下の階から呼ばれた名前に慌てて事務所を出て行く。
「やっと見つけましたよ城島さん、これからはずっと一緒に働けますね……」
楽しみとはどこか少し質の違う笑みを浮かべ俺の出て行ったドアを見詰めるお孫さん。
機嫌が良い孫の様子を見て、隣に立つ社長の方は良かったと孫バカ丸出しの笑みを浮かべていた。
俺は何で聞こえなかった言葉を聞き返さなかったのかと後に後悔する事になるのだが、今の俺はそんなこと知る由も無く、昼飯時で賑わう店舗でお客の相手をしているのであった。
終わり
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