Sky Blue

8/13
前へ
/160ページ
次へ
     生きることもつまらないが、自ら死を選ぶことが愚かしいことだと僕は知っているはずで、長い感傷に浸ってしまった自分を笑い、身を翻す。 「あっ、もうちょっとそのまま」 「えっ?」  突然聞こえたのは、低めだけど澄んだ、女の人の声。それは僕が、フェンスに手を掛けたときだった。  一瞬止まってはみたものの、そのままと言われても困ってしまう。自分がしていることの滑稽さは、自分が一番よく分かっている。  こんな、まるでドラマのような青春の1ページを演じてしまった僕を、一体誰が辱めようとしているのか。 「もう。そのままって言ったのに」  完全に振り向いて、まず目に飛び込んだのはカメラだった。こちらにレンズを向けた女の人が、針金の格子の向こうに立っている。
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加