56人が本棚に入れています
本棚に追加
涼しげな顔立ち、風になびく焦げ茶色のロングヘア、Tシャツにジーパン。青い空に映える、健康的な笑顔は眩しかった。
それは見たことのない顔で、僕はどうしたらいいのか分からないまま、フェンスを強く握った。
静寂の中、頭上を飛行機が通り過ぎ、僕の目は正面を見据えたまま、耳で機体が雲を割る音だけを聞いた。
「びっくりさせちゃった? ごめんね。すごく絵になってたからさ」
「──誰?」
絵。
そんな言葉に一瞬耳がぴくりと反応したが、今だけはどうでもいい。ただ、この状況を見られたことが恥ずかしくて、僕はぶっきらぼうに口を開いた。
「ああ、ごめん。私これでも写真家なの。瑠璃と言います。よろしくね?」
瑠璃。
冗談みたいによく似合う名前。
最初のコメントを投稿しよう!