Sky Blue

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     涼しげな顔立ち、風になびく焦げ茶色のロングヘア、Tシャツにジーパン。青い空に映える、健康的な笑顔は眩しかった。  それは見たことのない顔で、僕はどうしたらいいのか分からないまま、フェンスを強く握った。  静寂の中、頭上を飛行機が通り過ぎ、僕の目は正面を見据えたまま、耳で機体が雲を割る音だけを聞いた。 「びっくりさせちゃった? ごめんね。すごく絵になってたからさ」 「──誰?」  絵。  そんな言葉に一瞬耳がぴくりと反応したが、今だけはどうでもいい。ただ、この状況を見られたことが恥ずかしくて、僕はぶっきらぼうに口を開いた。 「ああ、ごめん。私これでも写真家なの。瑠璃と言います。よろしくね?」  瑠璃。  冗談みたいによく似合う名前。
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