Sky Blue

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    「藍色の藍に、人で、藍人」 「へえ。変わった名前だね?」  確かに変わっている。  いや、僕の言っているのは名前のことじゃなくて、この状況と僕なんかを写真に収める、この人のこと。  普通、なんて陳腐な言葉を敢えて使うなら、ここは普通「自殺はダメ」なんて言いながら駆け寄って来る場面なんじゃないのか。 「勝手に撮らないで下さい。それとも、モデルとしてバイト代でも出るんですか?」  別にモデルぶっている訳じゃない。ただ、悪いけど僕の顔は十人並みなのだ。それでなくても写真は苦手なのに、勝手に撮らないでほしい。 「バイト代? それはちょっと無理だけど」  一瞬言い淀(よど)んだ彼女が、カメラで顔を半分隠したまま、口元だけで笑った。 「その代わり、私が君にいろんな色を見せてあげる」
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