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ファインダーに顔をくっつけたまま、辛うじて覗く顔の一部。瑠璃はその口元からして、確かに笑っていた。
「いろんな色? 例えばどんなのですか?」
「そうだね。世界中の青ってとこかな?」
相変わらず、シャッター音が響く。青、それは僕の名前の色で、何より好きな色だった。
「ロマンチック、でしょ?」
はにかんだように笑いながらも、止まらない手。
「どう? どうせ、外に出られなくて退屈してるんだよね?」
口には出さないけれど、確かに、なんて思ってしまった。僕の片足は、今は僕の言うことを聞かない。
「いや、まぁ」
「じゃあ、決定ね」
瑠璃はやっとカメラを下ろした。スレンダーな体に、首からぶら下げられたカメラがやけに重たそうだった。
「今日からよろしく」
きっぱりと言って、きっぱりと白い歯を覗かせて彼女は笑った。僕に選択の余地はないように感じた。
「はい。よろしくお願いします」
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