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「じゃあ、読んで感想聞かせてね?」
結花は渡すだけ渡し、言うだけ言って、さっさと帰って行った。
一体、結花は何をしにここへ来たんだろう?
それは見舞い、と言うには炭酸の抜けたコーラみたいに何か物足りない気がした。
病人を前にしている割にはいつもと全く変わらない態度に少し腹が立って、何故だか少し安心した。
「母さん、別に片付けなくていいから」
「でも」
「いいから」
一度は喉につかえた言葉が、次の瞬間、勢いよく堰を切った。
「いいから。帰ってほしいんだ」
思わず声を荒げてしまって、自分のことながら驚いた。母も驚いた顔をしていた。親に対して、こんな物言いは初めてだった。
居心地が悪い。母の驚いた表情に、申し訳なさとさらに強い苛立ちを同時に覚えた。
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