MINT BLUE

8/16
前へ
/160ページ
次へ
「そんな難しい顔してたら、すぐ年取っちゃうんだから」 再び瑠璃はページをめくりながら言った。 ほんのり日に焼けて艶めく、滑らかで綺麗な額を、細い髪が流れるようなカーブで隠そうとする。僕は俯いて強調された、瑠璃の長い睫毛をただ見つめていた。 「ねえ、どうして個室なの?」 瑠璃が漫画を置いて、こちらを見ている。 涼しげな目に射抜かれて、僕は心臓を掴まれたような気がした。 「僕の父さんは自営業なんですけど」 くそ親父。つい、そんな風に思ってしまう。 「ここのお偉い先生と知り合いらしくて」 お偉い、父の知り合いの葛城(かつらぎ)先生。 そんな人が身近にいるせいか、父さんは僕に医者になれと言う。 自分の夢だったか何だか知らないけれど、押し付けられる僕はたまったものじゃない。 僕はただの骨折で、ここは国立病院だ。 公務員の権力って、一体何なのだろう?
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加