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想像、がこの手の中にあるかのようにリアル過ぎた。まるで蜃気楼を見ている気分だった。
それは母さんが家で大事そうに育てている赤いダリアのようだったけど、僕は確かに胃液が上がってきそうな鮮烈な血の匂いを感じていた。
赤と青のコントラスト。
本当は、畏怖を覚えるよりも先に、綺麗だと思った。
今、僕が立っている場所は田舎町の国立病院の屋上。小高い丘の上に建ち、眼下に美しい町並みが広がっている。
少しずつ少しずつ形を変えながら、だけど未だに古い商店街や木造家屋なんかも残している、僕のふるさと。逃れられない、優しいしがらみ。
僕は退屈で、この場所に来ることは何となく日課になっていた。
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