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後ろを振り向けば屋上から階下へと続く階段と、その為だけに小さなコンクリートの箱がある。裏に回り込めば、フェンスの外に出られる柵の扉があった。
目線の高さには簡単な鍵が設けられ、必要なのはわずか指一本だけだった。松葉杖をついた僕にでも、容易に外側へ出ることができる。
「鬱陶しい」
町を見下ろしながら思わずぼそりと呟いて、それでもどこからも返って来ない声に安心した。今、間違いなく僕は一人だ。
一歩前に踏み出すと、永遠の自由が手に入るが──。
死にたい?
よく分からない。
生きていて何になる?
分からない。
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