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「お姉様…それは、皆勤賞を取る事です!」
秋菜はそれを聞いて何を思ったのか、顔を伏せた。
「お、お姉様?い、いかがなさいました?」
嵐の前の静けさだろうか、秋菜の沈黙が逆に怖く明人は恐る恐る様子を伺った。
「明ちゃん、それなら大丈夫よ」
顔を上げた秋菜は満面の笑顔。
明人はこの笑顔を見て助かったと思った。
なんで呼び方が変わったのか、なんでいきなり笑顔になったのか?
この際そんな事はどうでもいい、こんなに笑っているんだ助からないはずがない。
しかし、明人の考えは間違っていた。
「もうとっくに遅刻だから♪」
秋菜は部屋の片隅を指さす。
片隅にある時計、時刻は10:17分。
明人は青ざめた。遅刻どころの話ではない、既に二時限目が始まっている時間である。
それに、逃げる口実が無くなってしまった。
「明ちゃん、残念だったわね?皆勤賞なくなっちゃって…」
「あ……あぁ!…」
恐怖に尻餅を付き、明人は後ずさった。
「代わりにお姉さんが勉強教えてあげよっか?」
後ずさる明人に秋菜はじわじわと近付く。
――ドンッ
明人の背中に壁がぶつかった。もう逃げ場はない。
「ね?明ちゃん♪」
ガシッと腕を掴まれる。
「――ひっ!………」
「ぎいやぁぁぁぁぁぁ!!!!」
朝の北條家に、明人の悲鳴がこだましていた。
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