左の町

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左の街には行ってはいけない そこにはノコギリを持った男が 口笛を吹いて奏でているから 彼は木すらも切れません ただその音色は一度聞いたら耳から離れず 一生あなたに付きまとうでしょう しかし彼は左利きだから 思わず街へ行ってしまった 町の人はニコニコと 同じ歌を歌っていました 肉屋の旦那は狂ったように 「おいしい肉ならうちで買いな」と 歌い続けるものだから グラムもポンドもありゃしない 時計屋の娘は調子を外して 「チクタクチクタク忙しい」 と無理矢理歌っているものだから 可愛いお顔が台無しだ 何処に行っても歌っているから 彼もついに歌いだした 「わたしは旅の怠け者 わたしはここの知らぬ者」 そしたら町のはずれにて 一番上手い男の声 そこには小さな喫茶店 主人は珈琲のカポカポとなる音に合わせて 「あいつのおかげてこんなにも歌が上手くなってしまった」 喫茶店のかたすみにゃ口笛とノコギリの伴奏が ふーふるふーふるふふふふふ きゃーららきゃーららきらきらら 彼は珈琲飲みながら 主人と一緒に歌ったさ やがて彼が戻るころ すっかり鼓膜をのっとられどこにいくにも歌を歌い 左の町には行ってはいけないと 誰もがひそひそ話すのだった けれども彼は気にしない だって歌しかわからないから ふーふるふーふるふふふふふ きゃーららきゃーららきらきらら
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