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「よく…間違えられる…」
「それは残念だ…」
重衡は頭を掻きながら苦笑いした。
「私はこの上の寺に預けられている…
どうやら行く行くは高僧になる事が決まっているらしい…
ところで、お前…何と言う名だ?」
少年は笑いながら頬杖をついた。
「私の名は…」
重衡は名乗る事が出来なかった。
“平氏の人間である”と言うことが
大層恥に思えた。
「名前に何の価値があろう…
おそらく人とは皆あの世に行く前…即ちこの世に生きる為だけの仮の姿だ…
仮の姿に名など要らぬ…」
重衡は強がってそう言い放った。
「もっとだ…
だが、それでは私はお前を何と呼べば良い?」
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