一時の安らぎ

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ある日重衡がいつものように家人の目を盗んで馬に乗ろうとすると、 宗盛に見つかってしまった。       「重衡…私は鞍馬に行くなとは言わん。   ただ…お前はまだ子供だ。   その瑠璃とか言う奴は…」           宗盛は瑠璃を知っていた。   どこかで隠れて見ていたに違いない。     重衡は憎悪の目で宗盛を睨みつけた。       「後をつけていたのか!   これだから兄上は卑怯者だと言うのだ!   私の事は放っておけ!」         重衡はとても気が強く、兄達にでさえ強い口調で意見するような子供だった。   それは大人になってからも変わらず、 自分がこの世で一番偉いと思い、 兄達をも見下す男だったと言われていた。       「お前なんか父上の言うことだけ聞いていれば良かろう!   私にかまうな!」       「重衡!」       宗盛は呆れた顔で、走り去る重衡の後ろ姿を見ていた。      
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