狂い始めた歯車

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女の子が書物を読んでいると石段を一人の僧が降りてきた。       女の子は慌てて読んでいた本を投げ捨てて、 もう一冊、横に置いていた本を開いた。     「何を読んでいたのだ?」     「万葉集です…」     「なら良い… あまり遅くならないように寺に戻りなさい…」     「はい!」       僧の姿が見えなくなると、女の子は石から飛び降りて さっき投げ捨てた本を拾い上げた。           「毎日…そこで隠れて私を見ているでしょう?」       重衡は驚いて、ゆっくり木の陰から出て来た。    
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