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――きっかけは、ヒデの一言だった。
「よっ浩一(こういち)。今日の放課後、合コン行こうぜ」
教室のドアを開けたとたん、軽い口調でヒデが声を掛けてきた。その表情は微笑みを浮かべながらも、どこか威圧感がある。
またか……。ヒデは朝から元気だな。
「いいよ、俺そういうの苦手だから。知ってて誘ってるだろ?」
苦笑しつつ、右手を軽く振ってみせる。
ヒデというのはあだ名で、彼の本名は轟 秀光(とどろき ひでみつ)。俺の親友であり、悪友だ。人間観察が趣味と言うだけあって、人が困ったり悩んだりしているのを楽しむ傾向がある。
だけど、根はしっかりしていて悪い奴じゃない。だからこそ、3年間も一緒に過ごしてきたんだから。
「当たり前だろ? たまには付き合えって! お前も少しは女に慣れないと」
そう言ってヒデは目を細めた。この顔は、俺をからかっている時の顔だ。
「それも分かってて言ってるだろ?」
思わず吹き出してしまった俺の背後で、勢いよくドアが開いた。
「おっはよ! 浩一!」
もの凄い声量で放たれた明るい声は、至近距離に居る俺の耳にびりびりと響く。
「ち、智明!(ちあき)」
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