5536人が本棚に入れています
本棚に追加
鍵がかかって開くはずのないドアから、一人の男が顔をだす。
一瞬無の間があったが、世恭さんが気がついたように教室の侵入者を睨む。
「誰だお前は。鍵をかけていたはずだ。この教室の鍵は俺が持っている。どうやって入った?」
クスリと男は笑う。
「最近の子供は偉そうだね…鍵は事情を説明したら教員の方がマスターキーを貸してくださったよ」
男の話を聞いて悠季くんが怪しむ。
「『マスターキー』…?学校のどの部屋でも開けられる鍵…どうして得体の知れないあなたに教員がそんなものを貸す…?」
悠季くんの問いにまた男が苦笑する。
「ホントに最近の子は…」
僕はといえば、驚いて身をひいていた。
なぜって?それはこの男がー…
「自分の弟を迎えに来たといえば貸してくれたさ」
男ー…いやお兄ちゃんは僕の方に近付き、抱き締める。
「帰りが遅いから心配になって迎えにきたんだ。」
お兄ちゃんは僕を抱き締めたまま、唇が耳に触れそうな距離で囁く。
「今朝はごめんね。…許してくれる?」
僕の体がビクリと震える。
最初のコメントを投稿しよう!