第一章【一冊の本】

2/5
前へ
/78ページ
次へ
池浦克巳。極普通の高校一年生。これと言って何かにずば抜けた才能を持っているわけでもなければ、何も出来ないような出来そこないの生徒でもなかった。‥普通。彼は自分のその地位に満足していた。満足?いや、満足もくそもない。彼は地位などというものは考えたりもしなかった。 克巳には母親がいない。自分を産んで間もなく母親は死んだ、とだけ父親から聞いていた。そんなわけで今彼は研究者である父親と二人暮らしをしている。 ――― 四月十日。 克巳はぼんやりと外へ出た。今は高校生になったばかりだから友達もあまりいないのだ。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加