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第二章【父親】
先程も少し触れたことだが、今克巳には父親しかいない。克巳の中に母親の記憶は全くなく、彼が生まれて間もなく死んでしまった‥という事実しか克巳は知らなかった。
【母親がほしい】昔の克巳はそのことを昼夜思い、父親に泣き付いたこともあった。父親はその度に克巳を抱きしめて『スマン克巳‥』とだけ静かに言うのだった。
克巳はそんな父親を心から尊敬していた。特に一緒にいる時間が長いわけでもない。むしろ研究者としての父親は克巳とは遠い存在とも言えよう。
だが‥克巳にとってはたった一人の家族。
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