第二章【父親】

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家族だから尊敬する。そんな言い方は変かもしれない。だが克巳にとって、一番尊敬する人は、どんな友達よりも父親だった。克巳にはその理由がわからない。だが、尊敬の念を抱くことに理由など要らない。尊敬してんだからそれでいいじゃないか。克巳はそんな性格だった。 『ただいま~』 四月十日。一冊の本を抱えた克巳は玄関で靴を脱ぐ。案の定父親の靴はない。父親は研究のため、帰りはいつも11時を過ぎるので当たり前と言えば当たり前だ。 克巳は父親の不在をもう一度確認すると、自分の部屋に入り静かにドアにカギをした。
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