序章 東京大震災

9/10
前へ
/543ページ
次へ
マンションの形はしていたのだ。 だが、5歳の知識は浅はかだった。 マンションは下の階から潰れていくのだ。 「え……」 僕は言葉を漏らした。 マンションの1階から3階まで、ペシャンコに潰れていた。 僕の住んでいる部屋は……………3階 「母ちゃん?父ちゃん?」 気付いたら僕はマンションに走って近づいた。 「危ない! 坊や!離れるんだ!!!」 僕の体を誰かが止めた。 多分、レスキュー隊員か消防士だろう。 「母ちゃん…僕、今帰って来たよ!…遅れてごめんよ!何時間でも正座するから。」 僕は止められた体を必死に前へ、前へと進めたが、大人の力には敵わなかった。 勝手に涙が大量に溢れでた。 「父ちゃん…今日ね、悠の父ちゃんが蟹持って帰ってきたんだ!!母ちゃんに内緒で食べに行こうよ!」 それでも、前に、僕は体を足を進めた。次第に僕は叫んでいた。 「ねぇ、返事してよ!! いるんだろ!!お腹すいたよ!!一人にしないでよ!」 すると、潰れた階から勢いよく炎がふきでた。 僕は汚れた顔をオレンジ色の炎の色に染めて、泣き叫んだ。
/543ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2791人が本棚に入れています
本棚に追加