嵐の前のなんとか

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「これ、花びらだったのか」 肩だけでなく学ランや髪の毛にまでくっついてくる桜の花びらを手に取り、指先で弄ぶ。 「なんで雪だなんて思ったんだろ…」 そう呟いて、思い出した笑顔があった。 『ユキ―!!!さくらっ!!すげーよ!!!ゆきみてー!!!』 “ユキ” 俺の事をこう呼んだのはあいつが最初で最後だ。 淡い思い出。 「懐かしいな…」 記憶の中のあいつの笑顔に、釣られて俺も笑顔になってしまう。 「アキ…元気にしてんのかな」 少し淋しい気持ちになってしまって、桜が舞う夜空を見上げた。 アキと初めて出会ったのも、確か春だった。 最後に見たのも― …いや、最後に見たのは雪が降り積もる真冬だ。 あの時のアキの瞳は、俺じゃなく灰色の雪景色を映していた。 「…ア {グゥーーーー☆}    キ……。」 …俺ってば、ぜってぇ渋い俳優とかなれねーな。 体が正直過ぎるもん。 「あはー☆今日の夕飯何かなー!!!」 家に向かって俺は駆け出す。 思い出して掌にあった花びらを手放すと 風に飲まれて何処かへ行ってしまった。 ・・・ コツ、コツ… 「……ユキ…?」
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