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とにかくオレは暇を持て余していて、ブラブラと寺の中に入った
広間に置かれた棺と遺影、真っ白な花たちがオレの目に飛び込んでくる
きつい花の匂いに一瞬息が詰まるが、ここで回れ右をするのもカッコ悪い気がして、気にしない素振りで中に入った
まだ片手で数えられる程度にしか広間に人は座っていない
座布団の数を見てげんなりする。この数が本当に座ったら寒いどころか蒸し暑いに決まってる
遺影にはオレの知らない親戚の女性が写っていた
ただ母親の話では相当偏屈な人だったらしい。遺影の女性は笑っていなかった
そこでふと視線に幼い影が写ってオレはそっちに気を向けた
おじさんおばさんばかりの葬式で唯でさえ浮いてるくせに、そいつは真っ白な頭に真っ白な服を着ていた
「KYだなアイツ…」
小さな呟きはアイツに届かないが、どうやら小さく肩を震わせ泣いているようだった
不思議なことに誰一人としてそいつに目を向けない
一番隅で正座して小さく涙する姿は健気だったが、あまりに浮いた出で立ちの為に一瞬だけ幽霊かもののけかと思った
ちなみにオレは霊感なんかない
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