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最前列の左端
声を上げずにすすり泣くそいつは、この季節に裸足で腰まで伸びた白い髪で顔まで隠れてとうとう蹲ってしまった
呆然と見ている間に、カレーの匂いが食堂から漂ってくる
参列者に振る舞われるんだろう
きっと葬儀も長くなる
いつの間にか広間にはオレとそいつだけになり、退散し損ねたと舌打ちしたい気分だ
(…この距離じゃ声も届くかわかんねぇな…でもシカトして行くのも…)
渋々後ろから近寄り、異常に細い肩に手をおいた
勢いよく振り返ってきた顔は、アイスグリーンの溢れてしまいそうなでかい目と頬がうっすら染まった白い肌の女だった
(うわっ何こいつ日本人!?ちょっ)
一目惚れ
するかと思った
「?」
「…あ…の…夕食…行かないんすか?」
声がひっくり返って凄く悲しくなる
幼稚な言い方だがもうそれしか当てはまらない
「……ありがとう」
十分見つめあったあとに聞こえたのは
明らかに変声期前の少年の声だった
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