愛の完結する場所へ

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機械達の大合唱は、 ピタリと止まった。 脱出ポットの隙間という隙間から水蒸気みたいなものがもうもうと立ち上ぼる。 ゴムが焦げる匂いする。 その脱出ポットの扉が、 プシューといいながら開いた。 中は薄暗くよく見えない。 「おお…由紀…!」 足取りがおぼつかないまま、 パパは駆け寄る。 でも、 科学者は立ち止まった。 扉から手がにゅっと出た。 ドロドロに溶けた手が。 指が一つの手に数十本生えていた。 のそりのそりと『ママ』は出てくる。 骨格は人の形を成さず、 それに無理矢理溶ける肉を巻き付けたような怪物。 必要以上に大きくねじ曲がった口からは「ゴブ」と気泡が出てくる。 目が一つ、 大きく大きく右側にだけついていた。 あんなの、 『ママ』じゃない。 「いや…いやああああぁ!!!!」 私は椅子を持って『ママ』の頭と思われる所を乱打した。 「死ね!!死ねぇ!!」 殺さなきゃいけない。 こんな『モノ』! 「死んで!!お願い死んでぇ!!」 めちゃくちゃに、叩いた。 よろめく『ママ』。 呆然とみつめるパパ。 椅子が壊れ、それでもなお鈍器を見つけ叩く私。
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