母の最初の死。

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私はまだその時小さかった。 忘れもしない。 来年で中学生になるという私は飼い犬のシーアと遊んでいた。 シーアは雑種犬。 白くて当時の私より大きかったが、 ものすごく大人しくて賢い。 小さな子供が大好きで、 目を離すと知らない子供といつの間にか仲良くなっていた。 だから私もシーアを通して友達が出来たりしてた。 この頃が一番家庭的に幸せだったと思う。 父は科学者だった。 実はいまだによく分からないが、 三次元とか四次元とか特殊相対性理論とか、 そんなことを研究してるらしい。 私にとっては何かの呪文にしか聞こえない。 でもいくつかの特許をとっているらしく、 それなりに裕福だった。 母は美しかった。 ホントに綺麗だった。 父も背も高くてヤセ型なのでちゃんとすればカッコイイのだが、 科学者という人間は研究以外無頓着なので、 普段は髪がボサボサヒゲボウボウ。 まるでポッキーの先に黒いマリモを乗せたみたいな姿だった。 「なんで結婚したの?」と母に聞いたら、 「あなたより子供だからよ」と答えてた。
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